接眼レンズは、対物レンズが結んだ中間像を見やすい大きさに拡大(有効倍率)し、見やすい視野で観察するためのレンズである。 | 図1 接眼レンズ |
■仕様
倍率(M:Magnification)
接眼レンズの倍率。接眼レンズの焦点距離で明視距離(250mm)を割った値となる。10×接眼レンズの焦点距離は、250÷10=25、 25mmである。10×が標準的に使われる倍率である。
視野数(FN:Field Number)
接眼レンズで見ることができる中間像の直径。単位はミリメートル。
アイポイント(Eyepoint)
観察の際に眼の瞳を置く最適な位置で、焦点位置の近傍となる。接眼レンズの射出瞳の位置と同じである(顕微鏡の能力 その2 ~コントラスト・画質を決める要素~ 2-4.瞳 参照)。
焦点板(Graticule)
外径、厚さが接眼レンズごとに決まっているため、適合しているものを組合わせる。外径が合っていても規定値より薄い焦点板を組込むと、きちんと固定されない。
■種類
表1 接眼レンズの特徴
種類 | 概要 |
---|---|
外焦点接眼レンズ | 前側焦点がレンズの外側にある。視野数を決める絞りがレンズの外側にあるため、焦点板の着脱が容易にできる。 |
内焦点接眼レンズ | 前側焦点がレンズの内側にある。視野数を決める絞りがレンズの内側にあり、視野数を決める絞りの直径は、視野数より小さい。 |
ヘリコイド付き接眼レンズ | 視度調整機構の付いている接眼レンズ。焦点板がはじめから内蔵されている接眼レンズは、このタイプになっている。焦点板を後から取り付ける場合でも、ヘリコイド付き接眼レンズを使うほうが観察がしやすい。 |
用語解説
【ヘリコイドとは】
ラセン機構のことで、回転させることで前後に移動する。ネジは1本のラセンになっており、1回転でネジ山ひとつ分前後する。
接眼レンズのヘリコイドは複数のラセンでできており、1回転でネジ山複数分前後する。カメラレンズのピント合せ機構(鏡筒の前後移動)にも採用されている。
■使用上の留意点
視度調整
長時間にわたって観察を続けていると、眼の筋肉が疲労してピントが合わせづらくなり、像がひとつに見えなかったり、観察が疲れることがある。このようなときは、正しく視度調整されているかを確認する。
視度調整は、観察者の目のフォーカス状態に合わせて接眼レンズと中間像との距離を調整する仕組みである。目のフォーカス状態とは、緊張しないでものを見ているとき、目がどのくらいの距離にある物体にピントを合わせているかということで、左右で幾分差がある。このため、両眼で楽に観察するには不可欠な調整である。また、朝夕や疲労の度合いによっても左右の視度が変わるため、長時間の観察では、時折、視度調整を直すのがよい。
コラム:ディオプトリとは?
顕微鏡のピントは観察者の眼(視度)によってピント位置が異なり、網膜に像を結ぶ状態がピント位置となる。この視度を表す単位をディオプトリといい、「D」で表される。 |
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表2 ディオプトリの表示と距離
ディオプトリ | 眼から物体の距離 |
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0D | ∞ |
-1D | 1m |
-2D |
50cm
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-4D | 25cm |
眼幅調整
両眼視で観察できるよう、両眼の瞳の幅と左右接眼レンズの光軸の幅とを合わせる調整をする。 |
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アイシェード
接眼レンズのアイシェードを使うと、横からの光を遮り、観察しやすくなる。メガネ装着時は使えない。
コラム:接眼ミクロメータによる計測法
試料サイズの計測には、接眼ミクロメータを使用する。接眼ミクロメータの目盛を試料面の縮尺に換算し、試料内の目的物の長さを計測することができる。次の2つの方法がある。
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図6 対物ミクロメータ外観 | 図7 接眼ミクロメータ外観 |
撮影レンズは、対物レンズによって得られた像をCCDカメラに結像するレンズである。以前は、写真撮影装置用のレンズにカメラとアダプタを組合わせていた ため、カメラ主体の撮影レンズがラインナップされていた。しかし、現在では、デジタルカメラの普及により、アダプタの中に撮影レンズが組込まれている。 |
■仕様
CCDのサイズと実視野
図8に示すように、CCDのサイズには数種類あり、いずれも35ミリフィルムと比較してかなり小さい寸法である。 | 図9 CCD 相対比較図 (タテ×ヨコ寸法は、撮像面の寸法(mm単位) |
マウントの種類
表3 マウントの種類と用途
種類 | 概要 |
---|---|
Cマウント | 主にCCDカメラやCMOSカメラを取り付ける。 |
バヨネットマウント | 接合部に爪が設けてあり、差し込んだあとひねって装着するタイプ。一部で使われている。 |
その他のマウント | Tマウント、Fマウントなどがあり、一眼レフカメラ用のマウントである。 |
アダプタ倍率
0.25×、0.35×、0.5×、0.63×、1×などCCDの撮像面の大きさに対応するよう縮小倍率のラインアップになっている。
■使用上の留意点
CCD(Charge Coupled Device)
CCDは、画像を光の強度に応じた画像信号に変換する働きをする。一枚のCCD上には、非常に小さな受光素子が縦横に整然と並んでおり、1つ1つの受光素子が光を受け、その強度を信号化する仕組みになっている。この1つ1つの受光素子を「画素」といい、いくつ存在するかが「画素数」となる。
図10 CCD とイメージ図
画素数
画素数には、総画素数と有効画素数(記録画素数ともいう)がある。総画素数とはCCDの画素の総数を指し、有効画素数とは、実際の画像を形成する画素の数を示し、画像の精細さを決める要素となっている。
有効画素数は、画素数が大きいほど高精細な画像を記録できる。一方、撮像面の寸法を一定として考えると、画素数が大きいほど1画素のサイズは小さいことになる。1つ1つの受光素子の面積が小さいために画像信号は弱くなる。
つまり、一般には画素数が大きいCCDほど感度は低い。
図11 CCD 撮像面
画素数の選択
画面表示や印刷の際は、画素数が大きい方が、より高画質な画像を期待できる。しかし、高画質であればデータ量も増え、メモリを消費したり処理に時間を要する。分解能と撮影実視野の関係を理解し、使用している対物レンズや撮影レンズなどの組合わせがどのような条件になっているかを考慮した上で、用途に応じた適切な画素数を選択することが大切である。
また、撮影画像を印刷する場合は、印刷サイズが記録画素数に適しているかどうかを確認することが必要である。通常、印刷サイズが大きいほど画像は粗くなる。一般に、銀塩写真の画質は300dpi(ドット/インチ)以上といわれているので、印刷サイズと記録画素数の関係が、この条件を満たすようにしておけば、銀塩写真に匹敵する高画質な印刷が可能となる。
カメラの同焦調整
接眼レンズでピントを合わせたとき、三眼鏡筒に付けているデジタルカメラにもピントが合うように調整することが必要である。調整が正しくないと、高倍対物レンズに交換したときに対物レンズ先端とプレパラートがぶつかることがある。
撮影実視野の確認
撮影実視野(撮影される標本上のタテ、ヨコ寸法)は下式で決まる。
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