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Observation method (Japanese text only)

光の当て方の違いで、こんなに変わる!

「光源から網膜までが顕微鏡」。光源からサンプル、そして対物レンズまでの経路にも、大切な選択肢があります。それは「どのように光を当てるか」という選択。観察したいサンプルは、色が付いているのか透明なのか、細かい構造を持つのか持たないのか、厚いのか薄いのか、などさまざまな特性があります。それに合わせて最適な方法で光を当てるには、どのように顕微鏡を使い分ければいいのでしょうか。


明視野観察と暗視野観察

顕微鏡観察を行う際、サンプルにどのように光を当てて観察するかで、その見え方は大きく変わってきます。実体顕微鏡、正立・倒立顕微鏡に限らず、基本的な観察法には、「明視野観察」と「暗視野観察」の2種類があります。実際に、実体顕微鏡で上記2つの観察法を用いた場合、下の写真のような観察像の違いを見ることができるでしょう。

明視野観察と暗視野観察の比較
明視野観察と暗視野観察の比較(実体顕微鏡 タマネギの細胞)

これら2つの観察法の特徴と、適したサンプルのタイプを簡単に下記にご紹介します。

1.明視野観察
もっとも基本的な観察法で、サンプルを均一な光で照らし、透過した光を観察する方法。視野は明るく、染色したサンプルの微細構造の観察に適している。

2.暗視野観察
サンプルに斜めから光を当て、サンプルからの散乱光や反射光等のみにより観察する方法。真っ暗な視野の中にサンプル部分が光って見え、透明なサンプルや可視光の波長より小さな物体の観察や検出に適している。なお、実体顕微鏡では、ステージ横についている偏斜照明調節つまみを回すことで、サンプルに当たる光の角度を調節することができます。これにより、真下から光を当て透過光を見る「明視野観察」に加えて、斜めから光を当てる「偏斜照明」により「明視野観察」と「暗視野観察」の中間的な見え方を実現することができます。

明視野観察と偏斜照明観察の比較
明視野観察と偏斜照明観察の比較(実体顕微鏡 タマネギの細胞)


位相差観察法と微分干渉観察法

正立・倒立顕微鏡で、透明なサンプルにコントラストをつけて観察するには、さらに特別な光の当て方があります。それが「位相差観察法」と「微分干渉観察法」です。

1.内部を透かして見る「位相差観察法」
「位相差観察法」では、サンプル中を通過して直進する光だけを位相板に通し、サンプルで回折した光との間に位相のズレをつくります。直進した光と回折した光とがひとつに重って像ができる際にそれらの光が干渉して、明暗のコントラストをつくるのです。このしくみにより、例えば無染色の培養細胞の細胞質や核のような内部構造までも明暗の違いとして見ることができます。

位相差観察画像
位相差観察画像

しかし、このしくみは、サンプル自体に厚さがあったり、屈折率の異なる媒質が積み重なっているようなサンプルには向きません。サンプルを直進するべき光が通過する際に屈折して、位相差効果が薄れ、下で説明するハロー(明るい縁取り)が強くなりすぎてしまいます。上に示したような、薄く広がる培養細胞や、精子などの観察に向いています。
「位相差観察法」には対物レンズの種類によって、明るい背景の中でサンプルが暗く見えるもの(ポジティブコントラストまたはダークコントラスト)と、暗い背景の中でサンプルが明るく見えるもの(ネガティブコントラストまたはブライトコントラスト)があります。
またサンプルの周りにハローが生じますが、サンプルの形や厚さによっては、このハローが強すぎることにより見たいものが見えないという場合もあります。ハローを目立たなくする位相板を備えた位相差対物レンズもありますが、どうしてもハローが邪魔になる場合は、「微分干渉観察」を選ぶなど、観察方法を変える必要があるでしょう。

2.立体感のコントラスト「微分干渉観察法」
「微分干渉観察法」では、照射光を振動方向が直交する2つの偏光に分けて、サンプルに通します。それら2つの光の間で、通過するサンプルの厚さに違いがあると、光をひとつにまとめたときに干渉が起きます。それによって透明なサンプルの像にコントラストをつける方法です。
この方法で観察すると、厚さが変わっているところが明るく見えたり、影がついたりするように、立体感のある見え方になります。

微分干渉観察画像
微分干渉観察画像

この方法は、ピントを合わせた位置にコントラストが付く、という特徴を持っています。卵のような厚いサンプルでも、見たい焦点位置にコントラストをつけることができるため、トランスジェニックを行う際のインジェクション操作などにも適しています。
ただし注意をしなければいけないのは、「プラスチック容器」は使えないという点です。プラスチックは光の振動方向によって屈折率が異なるため、グラスベースディッシュ(ガラスボトムカルチャーディッシュ)などを使用する必要があるのです。
以上のように、光の当て方によって各種の観察方法があり、その方法によって見える像は大きく変わってきます。そして、それぞれのしくみを知った上できちんと調整をすることで、適切な像を得ることができるのです。
みなさんも、対象とするサンプルに合わせて、最適な光の当て方を検討してみてください。これまでよりも、より観察しやすい像が得られるかもしれません。


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