光学顕微鏡には、様々な調整ダイヤルやつまみがついています。これらを頻繁に使う人は多くないかも知れませんが、実際には観察したいサンプルや対物レンズに合わせてその都度調整を行うことで、明るさや分解能、コントラスト、ピントを大きく改善することができます。
これらを使いこなして最適な調整を行うことが、顕微鏡の上級者への第一歩。その中でも今回は「光軸と絞り」に注目して、調整法をご紹介します。
美しく正確な像を得るためには、過不足なく均一に、かつ最良のコントラストと分解能が得られるように照明光をサンプルに当てることが大切です。
そのために、まずは光源からサンプルへと至るまでに、光がどのような道を通るのか、その「光路」を把握しておきましょう。
通常の光学顕微鏡では、光源からの光は、「視野絞り」「開口絞り」という2つの絞りを通過した後、「コンデンサ」を通ることでサンプル面へと集まります。この2つの絞りは光路につくられた門のようなもので、「視野絞り」はサンプル面に光が当たる範囲を、「開口絞り」は照明光の開口数を調節しています。また、「コンデンサ」は絞りを通過した光を集光するためのレンズで、その高さを変えることで集光位置を調節することができます。
光学顕微鏡の光路図
この「視野絞り」、「開口絞り」、および「コンデンサ」を最適に調整してはじめて、対物レンズの開口数とサンプルの実視野に過不足のない明るく均一な光が得られ、その光をサンプルに当てることで、最良のコントラストと分解能で観察することができるようになります。
それではさっそく、それぞれの調整方法を見ていきましょう。
今回は全ての顕微鏡に共通する、明視野観察のための最も基本的な調整方法についてご紹介いたします。
基本操作箇所と名称
光軸調整の手順 |
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サンプルへの照明光の開口数を決める「開口絞り」は、観察像のコントラストと分解能に影響します。調整のためには、まず接眼レンズを外すことから始めます。
接眼レンズを外した穴(スリーブ)から鏡筒の中を覗いてみると、明るく輝く円が見えるはずです。(図1)その円のことを「対物レンズの瞳」と呼びます。その瞳を見ながら開口絞り環を回すと、瞳の中で多角形の光の像(開口絞り像)のサイズ変化を見ることができます。
開口絞りの調整
開口絞りは、開口絞り像の直径が対物レンズの瞳の直径の70%~80%くらいになるように調整しましょう(図2)。開口絞りが開きすぎていると分解能は高 くなりますがコントラストが低下し、全体的にぼんやりとした像になります。逆に絞りすぎていると、コントラストは高くなりますが分解能が低くなり、サンプ ルの細部が見えなくなってしまうのです。
また透明なサンプルの場合は開口絞りを最小に絞ることでコントラストが高まり、サンプルの形状をより見易くできる場合があります。しかしその場合は、実際 にはもっと細かい構造があるのに、分解能が低下しているために見えなくなってしまっているかもしれない、ということを意識する必要があるでしょう。
開口絞りも対物レンズの開口数に合わせて調整する必要があります。最良のコントラストと分解能で観察するためには、レンズ交換のたびに調整を行うようにしましょう。
視野絞りと開口絞りは最適な調整をしなくても、それなりの像を見ることはできます。しかしサンプルの本当の状態を捉えるためには、これらの調整は欠かせません。そういう意味で、絞りを使いこなしているかどうかは、その人が顕微鏡をどれほど使いこなしているかの指標となります。
みなさんも調整を行う習慣をつけて、顕微鏡の上級者を目指してください!
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