光の干渉は、特定の状況下で複数の光の波が互いに作用し合い、波の結合振幅による増強または低減を発生させる現象です。本稿では、光の波の建設的干渉と相殺的干渉、干渉の発生要因、この現象を示す現実世界の例と実験について説明します。
光波の重要な特徴は、特定の状況下で干渉し合う力です。物理学における干渉の定義は、波の重ね合わせによって、発生する波の振幅が増減することです。ほとんどの人は日常的に何らかの光の干渉を目にしていますが、この現象がどうやって起きるのかを理解していません。光の干渉を示すよい例の1つは、水に浮かぶ油膜から反射する光です。別の例としては、図1に示す石鹸の泡が挙げられます。太陽光や人工的な光源で照らされると、さまざまな美しい色を反射します。
この色の動的相互作用は、泡の内側と外側の両面から光が同時に反射することで生じます(図1)。2つの面はごく近くに接していて(泡の厚さはほんの数ミクロン)、内側から反射した光が外側から反射した光と建設的かつ相殺的に干渉します。これは、泡の内側から反射した光が外側から反射した光よりも遠くに進むからです。内側と外側から反射した光波が結合すると、互いに干渉し合い、相殺的または建設的干渉により白色光の一部が排除または増強されます。その結果、泡から反射する光は多彩な色に見えます。内側の光波が進む余分な距離が、外側の光波の波長と一致した場合、建設的に再結合して、両者の波長から鮮やかな色が生まれます。光波が一致しない場合には相殺的干渉が発生して、反射光(と色)が打ち消されます。
以下に、光波が互いに干渉する状態の例を示します。例えば、方向Dに向かって進む同じ光源からの1対の光波を考えます。Dは伝播方向(図2)であり、振動(図2にCで表されているように伝播方向に対して垂直)が互いに平行し、振動の方向とも平行している場合、光波は干渉し合います。振動が同一面で発生せず、互いに90度で振動する場合、干渉し合うことはできません。
上に挙げた基準をすべて満たしているとすれば、光波は互いに建設的または相殺的に干渉します。ある波の頂点が別の波の頂点と一致する場合、振幅は相加されます。両方の波の振幅が等しい場合、振幅は倍になります。光の強度は振幅の2乗に比例することに留意してください。したがって、振幅が倍になれば、強度は4倍になります。このような相加的な干渉は建設的干渉と呼ばれます(図2)。
ある波の頂点が別の波の谷と一致する場合、振幅は低減するか、完全に打ち消されます(図3)。これは相殺的干渉と呼ばれます。強度は低下するか、完全に打ち消されると真っ暗になります。
光の干渉2つの光波が組み合わさって互いに干渉し合う作用を見てみましょう。
19世紀初期に活躍した物理学者トーマス・ヤングは、光が波動現象であることを示して干渉を実証し、さまざまな光の色は波長の違いから作られるという仮説を唱えました。これは、光が粒子の流れであるという理論に広く傾いていた当時の一般的な考え方と対照的なものでした。1801年、ヤングは可視光に波のような性質があることの重大な証拠を示す実験を行いました。「二重スリット実験」と呼ばれるこの古典的実験は、当初は光源としてまず単一スリットを通して回折させた太陽光を用いていました。しかしここでは、コヒーレント赤色レーザー光を用いて行った実験について説明します。
二重スリット実験の基本設定を図4に示します。コヒーレントレーザー光が2本のピンホール開口部を持つ障壁を照らし、光の一部だけが通り抜けられるようになっています。スリットの後ろにスクリーンを置くと、明るい赤色と暗い干渉縞の模様がスクリーン上に見えてきます。この実験のポイントは、障壁に空いた2本のスリットから回折される光の相互コヒーレンス度にあります。
ヤングの二重スリット実験波長とスリットサイズによって干渉縞がどのように変化するか見てみましょう。
図4(および上のインタラクティブチュートリアル)に示すように、レーザー光が2本のスリットで回折されると、それぞれの回折波が一連のステップで一方の波に合わさります。波は同調して合わさる(位相の合った建設的干渉)ことも、同調せずに合わさる(位相のずれた相殺的干渉)ことも、部分的に同調して合わさることもあります。波が同調して合わさる場合、建設的干渉によって互いに相加され、スクリーン上に明るい領域が示されます。波がまったく同調せずに合わさる領域では、相殺的干渉によって互いに低減され、スクリーンのその部分は暗く見えます。レーザー光の2つの回折ビーム間の干渉によって作られる、スクリーン上の模様は、一般に干渉縞と呼ばれます。
光が持つ波のような性質や干渉作用を実証するために考案された実験は、他にもあります。最も有名なのはハンフリー・ロイドによる単一鏡実験と、オーギュスタン・フレネルによる二重鏡とバイプリズムの実験です。これらの実験の詳細については、参考文献に示した数多くの物理学書で解説されています。
有名な17世紀の数学者および物理学者であるアイザック・ニュートンは、干渉現象を研究した最初の科学者の1人です。彼の有名なニュートンリングの実験では、平面ガラス板の上に曲率半径の大きい凸レンズを置いて圧力を加え、レンズとガラスを固定します。これを反射する太陽光を通して見たところ、図5に示すような同心円状の一連の光と暗い色鮮やかな光の帯を観察できました。ニュートンはこのリングにある程度の周期性を認め、この観察を用いて光の波動説を示唆しました。にもかかわらず、ニュートンは光を粒子の流れと考えていました。
このリングは、凸レンズと平面ガラスの間にある薄い空気の層によって作られます。ガラスの上面と底面で反射した光が重なり(結合し)、色の付いたリングとして干渉縞を作ります。この原理は、レンズメーカーが大きな研磨面の均一性を検査する際によく用いられます。
干渉縞の強度分布(ヤングの二重スリット実験で観察されたものなど)は、均一な背景上に存在する場合に強度が変動します。強度の可視度(V)を定義したのは、20世紀初めの物理学者アルバート・ミケルソンで、縞の最大強度と最小強度の差をそれらの合計で割ったものとしました。
V = I(max) - I(min)/I(max) + I(min)
ここで、I(max)は最大強度、I(min)は最小強度です。この方程式から、理想的な縞の強度は常にゼロと1の間にありますが、実際の縞の可視度は実験の形状設定と使用するスペクトル範囲によって異なります。これは自然に発生する事象で観察される無数の干渉縞に関与しています。
物質に圧力を加えた領域で生じる干渉色は、偏光で容易に観察できます。図6の定規はプラスチック製で、交差偏光板を通して観察されています。普通の光の下では、この定規は透明で目盛りがはっきりと見えます。ところが偏光下で見ると、より大きく変形している領域がより深く応力模様を示しています。これは定規を構成する長鎖高分子の高い連帯度によるものです。定規の左側にある穴の付近で、最も大きく複屈折が発生しているのが分かります。
光の干渉を使うその他の例として、レーザーによる長距離の測定があります。この場合、何マイルもの範囲を超えて非常に小さな距離を測定するためにレーザーを使用できます。レーザー光を分光し、それを異なる表面から反射させることで測定します。分光レーザー光を再結合して得られる干渉縞を分析すると、2つの対象物間の距離を驚くほど正確に算出できます。
ホログラムも、光の干渉が作り出す3Dのような画像を利用しています。反射ホログラムでは、参照光と物体光の両方を厚いフィルムに反対から反射させます。これらの光が干渉して、3Dに見える画像に対応する明るい領域と暗い領域を作り出します。透過ホログラムでは、参照光と物体光の両方をフィルムの同じ側に使用して、同様の作用を生み出します。
また干渉は、音波や、流れのない水たまりで起こる波でも発生します。家庭でできるとても簡単な干渉実験は、水をためたシンクと2つのビー玉を使って行います。まず、水を波立たないようにさせてから、約30センチメートルの高さからビー玉(約25~35センチメートル離す)を同時に水に落とします。光の波と同じように、2つのビー玉は水中で全方向に広がる連続する波を生み出します。ビー玉が水に入った場所の間でできた波は、次第にぶつかります。同調してぶつかった場所ではそれぞれが相加されてより大きな波を作り、同調せずぶつかった場所では互いに打ち消し合います。試してみてください。
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