Image of the Year Award 2018
カール・ギャフ氏へのインタビュー

Olympus Image of the Year 2018 – カール・ギャフ氏へのインタビュー

カール・ギャフ氏によるドーパミンの小滴の画像が、オリンパスのImage of the Year award 2018の2位に入選しました。

ここでは、そのままでは透明だったサンプルに、見事な色彩を作り出した光学的効果と巧みなコントラスト法について解説してくれました。

写真について教えてください

私はこれを『アイスレイン』と呼んでいます。画像には、ガラス基板上の固化した神経伝達物質ドーパミンの小滴が写されています。スライドガラスに少量のドーパミンを置き、加熱して、溶解すると、ジュージューと熱くなって基板全体に飛び跳ね、小さなプールと微小な小滴を作り出しました。

大部分の結晶が枠の底に沿って流れているのが分かると思います。冷却時の収縮で結晶にひびが入ります。オレンジまたはマゼンタに見える領域は、最も厚い膜で、銀色と青色の領域は最も薄い膜です。この印象的な色彩は、結晶構造の複屈折および光学干渉の組み合わせによって作り出されています。この色彩を発生させるには、膜の厚さが光の波長と類似していなければなりません。

画像はどのように作成されたのですか。

オリンパスのBX51顕微鏡を使って100倍の倍率で画像を取得しました。BX51顕微鏡の光学系は微分干渉コントラスト(DIC)用に設定しました。ガラス基板上に調製されたドーパミンの膜は半透明ですが、DICの光路に置くと、個々の厚みやそれぞれの向きによって作り出される、1つ1つの結晶粒子とまばゆい干渉色が見えます。対物レンズの上に置かれたノマルスキープリズムを前後に移動させて、色を調節できます。画像は、カメラを回転し、検出パラメーターを最適化して作成しました。

この写真のアイデアはどのようにして生み出したのですか。

結晶の撮影を開始する時は、特定の目標を考えているわけではありません。物質の異なる割合や加熱/冷却温度、さらに環境条件を試すという意味では、純粋な研究と発見の過程です。大事なのは、最も興味深く、審美的な構造の配列がどれであるかを見つけることです。

もちろん、それらの結晶構造を全く同じに再現することは決してできませんので、全てのスライドがそれぞれ独特なのです。要は、満足する画像を作成するために、構図とともに、光学系のコンポーネントをいかに設定し、調節するかです。

芸術のツールとして顕微鏡を使用するというアイデアはどのようにして得たのですか。

最初の顕微鏡をもらったのは、確か8歳の時でした。おもちゃの顕微鏡でしたが、それで見えるものに心を奪われました。その顕微鏡には当時カメラを取り付けることができませんでした。もちろん、振り返ってみると、現在私が見慣れている素晴らしい結果を生むにはほど遠いものでした。光学顕微鏡と電子顕微鏡を使って科学的で美しく芸術的な画像を効果的に取得するため、長年にわたって、顕微鏡学者になるという夢を徐々に強めてきました。

顕微鏡法と写真撮影法を組み合わせてどのくらい経ちますか。

この独特な写真芸術を作成するために、現在使用している最先端の研究用光学顕微鏡や電子顕微鏡を使う夢が叶ったのは、ほんの数年前です。以降、この画像を作成する知識を深め、技術を高めるために多くの費やしました。常に何か新しいものが見られるので、それは楽しく、やりがいのある経験です。

顕微鏡法の何が最も面白いと感じますか。

顕微鏡の物理学や、どうやって動くのか、また素材の構造の精査に使用できる様々な設定に非常に興味があります。超解像蛍光顕微鏡法、低温電子顕微鏡法やX線回析の最近の進歩にも興味をかき立てられます。

それらによって、全ての細胞に存在する分子のナノマシンの入り組んだ構造をどのようにして紐解き、生体分子の組織パターンや、それらがどのように集合し、細胞内に細胞小器官を構成するかを発見できるようになったかということです。

この興味はどこから始まったのですか。

思い出せる限りずっと、科学については興味があり、なんでも知りたがっていました。おそらく、この顕微鏡と科学への興味は、初めて池の水滴を100倍の倍率で見た時に始まったのだと思います。裸眼では平凡な水滴に、見られているのにも気づかず毎日の生活をしている、ものすごい数のほんの小さな機械のような動物が含まれているのです。

作品制作には顕微鏡はどのように役立っていますか。

顕微鏡によって、自然から収集したサンプルを研究し、それらの特徴を詳細に解明し、暗視野、偏光やDICなどの様々な設定を使ってサンプルのコントラストを向上することができます。デジタルカメラなどの電子検出器を使用することで、科学的および芸術的に関心のある特徴の写真を撮影することができます。

今後どのような事を達成したいと考えていますか。

いつか、この種の芸術作品を作成することに特化した顕微鏡研究室を立ち上げたいということと、自分の作品を大学の科学の教科書に用いられたいということです。

新たに創設されたGlobal Image of the Year Competition

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