オリンパスライフサイエンスインスタグラムのアカウントにオリンパスのお客様から投稿いただいた素晴らしい作品をご紹介したいと思います。
この1カ月、Håkan Kvarnström氏 とともに初めてのインスタグラムテイクオーバーを実施し、1週間分の画像を一緒に見ながら作品に関する質問に答えていただきました。
Kvarnström氏はオリンパスの2018年European Image of the Year Europe Awardの受賞者であり、科学の美しい側面を捉える経験が豊富です。Kvarnström氏が述べるように、同氏の作品は「画像と画像が語るストーリーがテーマとなっています。ミクロの世界は感動的な美しい発見で満たされています。」
今月の上位人気の5つの画像がすべてKvarnström氏のテイクオーバーからのものであったことは驚きではありません。ここからは、Kvarnström氏の説明文とともに2月の上位5作品を見ていきましょう。
この写真には、フロリダの湿地から採集されたサンプルにおいて発見された線虫が写っています。線虫は地球上で見出される全動物個体数の80%に上ると推定され、地球上で最も多く存在する動物です。極地から熱帯地方まで海水、淡水および土壌を含むほぼすべての生態系を占領しています。
一般的な写真と同様に、照明法は印象的な画像の作成において不可欠です。私は、美しい画像はその画像が持つストーリーを伝えることに大きな影響を及ぼすと考えています。したがって、顕微鏡下で被写体を最もよく照らすために、さまざまな照明法やコントラスト法を習得することが重要です。多くのミクロ生物は透明で色がないため、通常の光源で照らされると、ほぼ見えません。コントラストを高め、透明な被写体を見えるようにするために、さまざまなコントラスト増強法が用いられます。これらの手法では、さまざまな方法で光を変えることによって、疑似カラー、陰影、カラーまたは黒色の背景や3次元的構造も得られます。コントラスト増強法は非常に高コストである場合がありますが、ありがたいことに、顕微鏡写真において最も有用な方法の1つは非常に低コストです。集光器の下に簡易偏光フィルターを追加し、光が対物レンズを通過した直後の経路に別のフィルターを追加することによって、色彩豊かな画像を作成できます。厚さや屈折率の差によって異なる色が生じ、サンプル(またはフィルター)を回転させ、移動させることによって異なる効果が生み出されるでしょう。一部の顕微鏡では偏光フィルターが出荷時に取り付けられていますが、ほぼすべての顕微鏡で3次元ムービーグラスからプラスチックレンズを取り外し、顕微鏡に合わせて偏光フィルターを取り付けることができます。
オリンパスBX51をUPLSAPO40X対物レンズとともに使用し、偏光を用いて撮影された画像。
私の作品は顕微鏡への関心が出発点でしたが、次第に画像と画像が語るストーリーが主なテーマとなってきています。ミクロの世界は感動的な美しい発見で満たされています。私はこのような生物をできる限り審美的に表現することにかなりの努力を払っています。自分は肉眼では見えない生命を記録する自然写真家だと考えています。周りを見回すと、肉眼で見える生命体、すなわち樹木、植物、鳥やその他の野生生物が見えます。長い間、科学者たちは自然がこれらの目に見えるものだけから成り立っていると考えていました。その後、地球上の生物の3分の2は顕微鏡がなくては見ることができない微小な生物であることが分かりました。デジタルカメラを搭載した現代の顕微鏡は科学的な写真撮影に大変革をもたらし、このような世界をのぞき見ることができるようになりました。
本日の写真は、ボツリオコッカスブラウニーと呼ばれる緑藻類を示しています。細胞のバイオマスの30~40%を占める油が細胞の縁の周囲に漏れ出ているのを見ることができます。これは、オリンパスBX51顕微鏡を使用し、UPLSAPO60XW水浸対物レンズと微分干渉コントラスト(DIC)を用いて撮影されました。水浸対物レンズ の大きな利点は、作動距離が対応する油浸対物レンズよりはるかに長いことです。これは、被写体が水試料の中で移動する可能性があるウェットマウントにおける厚みのあるサンプルにとって有利に働きます。この被写体は対物レンズの視野より大きかったため、上部の画像と下部の画像をそれぞれ貼り合わせて最終画像を作成しなければなりませんでした。
オリンパスBX51顕微鏡を使用し、UPLSAPO60XW水浸対物レンズと微分干渉コントラスト(DIC)を用いて撮影された画像 。
この画像は、有名な写真家のStephen Wilkes氏(@stephenwilkes)と昼と夜の両方が1つの画像に捉えられた「Day to Night」と呼ばれる彼の画像シリーズから着想を得ました。
科学写真家は一般の写真家から画像合成、光の適切な使用、芸術的表現など多くのことを学ぶことができます。顕微鏡写真で魅力的なことは、さまざまな照明法やコントラスト法によって顕微鏡下の被写体のさまざまな特徴が強調されることです。被写体の表面を強調して外部形状をよく分かるようにする手法もあれば、ナイフのように被写体を切り開いて内部構造を可視化する手法もあります。
このシリーズの一部の画像は、2つの照明法を組み合わせた融合画像を得るために、スタックして貼り合わせた後、Photoshopで合成した100枚に上る画像から成っています。被写体が動くと最終画像が駄目になってしまうため、この手法の課題は顕微鏡の背後で十分迅速に作業することです。
2枚の画像の合成を作成するために、DICと蛍光照明を使用して撮影された緑藻類のミクラステリアスの画像。
この写真は、2つの異なる種、すなわち珪藻のTabellaria fenestrata var. asterionelloidesとチリモのおそらくStaurastrum pseudosebaldiを示しています。スタウラストルム(Staurastrum)は葉緑体による従来の緑色をしています。珪藻も葉緑体を持っていますが、フコキサンチンなど他の色素も含有しているため、黄褐色をしています。
私はしばしば画像の作成方法と使用しているワークフローについて質問を受けます。デジタルカメラは顕微鏡写真に大変革をもたらし、その結果、かつてはアナログフィルムを使用していたため事実上不可能だった画像の質を高めるための手法が多数生み出されました。私が使用している最も重要な手法、すなわちフォーカススタッキングについてご説明します。フォーカススタッキングは、顕微鏡対物レンズの極めて浅い被写界深度の問題を克服する手法です。高倍率で高NA対物レンズを使用すると、被写界深度が数分の1ミリメートルである場合があります。これは、被写体の厚さが1マイクロメートルである場合、同時にピントが合っているのが被写体のごく一部のみであることを意味します。ピントが合っているエリアを変えるには、サンプルまたは対物レンズを上下に動かす必要があります。典型的なスタックでは、被写体の異なる部分でピントが合っている画像は10~20枚です。場合によって、スタックは100枚以上に上る画像から成り、各画像から一部の画素のみを使用して最終画像を作成します。フォーカススタッキングソフトウェアは、ピントが合っている画素の選択のみがすべてではありません。特にクリーンな背景が欲しい場合、ピントが合っていない画素の選択も同様に重要です。優れた手法は、クリーンな背景を得るためにのみ、ピントが大きく外れた被写体の画像を数枚選ぶことです。次に、スタッキング中にソフトウェアを使用して、被写体用(ピントが合っている)と背景用(ピントが外れている)に欲しい画素を選択します。スタッキングソフトウェアはインテリジェントアルゴリズムによって適切な画素を選択するのに役立ちます。
この画像は43枚の画像の合成スタックです。オリンパスBX51を使用し、UPLSAPO60XW水浸対物レンズとDICを用いて撮影されました。
最後の画像は小さな甲殻類のオカメミジンコ(Simocephalus vetulus)を示しており、Stephen Wilkes氏(@stephenwilkes)から着想を得たもう1つのサンプルです。
2枚の画像の合成を作成するために、明視野と蛍光照明を使用して撮影された画像。
Håkan Kvarnström氏には、このように多くの素晴らしい画像を共有していただき、また、このような素晴らしい検鏡法について詳細に語っていただき、心よりお礼申し上げます。
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