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蛍光イメージングのその先へ:SHGおよびTHGを用いた生物学的イメージング

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第2次高調波発生(SHG)および第3次高調波発生(THG)検鏡法

最新のライフサイエンス研究において、蛍光イメージングはよく使用されている強力な技術です。ターゲットに特異的に標識された蛍光色素により、発せられた蛍光シグナルは、僅かな背景に対し、分子レベルまでの優れたイメージングコントラストを示します。

高度に開発された光学技術と最先端の遺伝子工学による広範な標識アプローチは、生物学研究における蛍光イメージングの成功要素です。

しかし、全体として成功しているにもかかわらず、蛍光標識や蛍光性分子が必要なために、蛍光検鏡法の適用には依然として限界もあります。

  • 多くの生体分子は、非蛍光性で小さく、蛍光標識によって簡単に摂動されます。
  • 生体における蛍光色素の発現レベルと特異性は、実験結果を複雑にすることがあります。
  • 外因性の蛍光標識を使用することは、ヒトにおける生物医学の研究においては現実的ではありません。

これらの限界を考慮し、蛍光以外のコントラストを用いた光学イメージング手法が求められます。このブログで、蛍光イメージングにとらわれることなく、研究能力の向上を図れるようにするための手助けとなる別の生物学的イメージング手法をみていきましょう。

蛍光イメージングのその先へ

非線形光学系は、特定の分子の内因的特性を利用してシグナルを生成することができ、蛍光が不要のイメージングコントラストを形成します。

高度なレーザー光源と検鏡法技術が利用できるおかげで、非線形光学系は、研究室での空想上の実験のためだけのものではありません。非線形光学系は、生物学的イメージングに実用可能なソリューションとなり、研究者たちから蛍光検鏡法を超える思考を引き出しているのです。良い例として、光高調波発生(HG)検鏡法が挙げられます。

第2次高調波発生(SHG)と第3次高調波発生(THG)検鏡法を理解する

簡単に言うと、HGは非線形光学プロセスであり、n個の光子が同時に材料と相互作用を起こすことで1つの光子に変換されます。第2次高調波発生(SHG、2つの光子が1つの光子に変換)と第3次高調波発生(THG、3つの光子が1つの光子に変換)は、生物学的イメージングでは最も多く用いられるHG検鏡法です。

SHGとTHGにおけるこの光子変換プロセスを、下のヤブロンスキー図(図1)に示します。SHGは、光子に励起光子の倍の光子エネルギー(半分の波長)を与え、THGは光子に励起光子の3倍の光子エネルギー(3分の1の波長)を与えます。

SHG and THG photon conversion process

図1:SHGとTHGの光学プロセスのヤブロンスキー図。破線は、仮想状態を表します。

多光子検鏡法と同じように、SHGとTHGはともに、小さな励起焦点体積で非線形光学プロセスを満たすために、通常は近赤外線波長の範囲での超高速パルスレーザー光源が必要となります。その結果、SHGおよびTHGの検鏡法では以下の特性がみられます。

  • 内在的な光学切片能力
  • 高度に散乱した組織の深層イメージング
  • 低い褪色と光毒性
  • SHGとTHGのシグナル強度は、それぞれレーザー励起力の面積と体積に比例します。

ただし、多光子イメージングと違い、SHGとTHGのシグナルは、材料の光学的特性と構造によってもたらされます。

  • SHG検鏡法は、膠原線維、微小管、筋ミオシン、デンプン、皮膚組織、角膜実質などの非中心対称性分子や規則構造のイメージングに多く適用されます。
  • THG検鏡法は、通常、細胞小器官、赤血球や白血球、脂肪滴、脂肪組織、軸索髄鞘、骨などの高屈折率の物質またはインターフェイス(周囲の水と比べて)のイメージングに適用されます。

蛍光色素が不要なSHGおよびTHGの検鏡法は、ラベルフリーなイメージングが可能であり、生物学的組織、生体、また、診断用の医療画像においても、分子や構造の情報を提供します。

Second harmonic generation (SHG) and third harmonic generation (THG) microscopy

図2:オリンパスFVMPE-RS多光子顕微鏡で撮影した標識されていないブタ脂肪組織のSHG/THG画像。脂肪組織内で、SHGシグナル(シアン)は膠原線維を示し、THGシグナル(マゼンタ)は脂肪を示しています。

図3:FVMPE-RS多光子顕微鏡で撮影したゼブラフィッシュ胚の血流SHGシグナル(赤)は、筋繊維を示しています。THGシグナル(緑)は、赤血球を示しています。画像提供:P. Engerer氏(Misgeldグループ、TU Munich)

ここまで、SHGおよびTHGによる検鏡法の基本について説明してきましたが、次のセクションでは、これらの技術を実用する際に手助けとなるいくつかのヒントをお教えします。

SHGおよびTHGの検鏡法を構成する際の実施上の留意点

SHGおよびTHGの検鏡法では、同じ近赤外線パルスレーザー光源とレーザースキャンユニットを多光子イメージングのシステムと共有できるため、オリンパスのFVMPE-RS多光子顕微鏡は、SHGおよびTHG検鏡法と容易に組み合わせてマルチモーダルなイメージングシステムを構成することができます。

以下が、SHGおよびTHGの検鏡法を設定する際の2つの実施上の留意点です。

  1. 前方検出と高感度検出器

    蛍光放出は一般的に等方性ですが、SHGとTHGのシグナルは、光波混合プロセスから派生する一定の方向性を持っています。ほとんどのサンプルで、前方シグナル(対物レンズを離れる方向)は後方シグナル(対物レンズに向かう方向)よりも強力です。この場合、高NAコンデンサと透過ノンデスキャン検出器(NDD)が、前方シグナル検出に適した選択になります。高度に散乱した組織では、前方シグナルのいくつかは後方散乱させることができ、後方シグナル検出で検出することができます。この場合、ガリウムヒ素リン光電倍増管(GaAsP PMT)などの高感度NDDを用い、特にバルクサンプルや生きた動物での前方検出が不適な場合に、後方検出効率を最適化します。

  2. 長波長での良好なレーザー出力

    THGシグナルは、非線形光学プロセスを満たすために良好なレーザー励起力を必要とし、励起波長の3分の1で生成されます。THG検鏡法におけるより良好なシグナルの伝送と検出のためには、1200nmを超える波長で良好な出力が得られるレーザー光源を使い、THGシグナルが可視光の範囲内に収まるようにします。過去には、1200nmを超えるレーザー光源を生成するためには、近赤外線パルスレーザー、光学パラメトリック発振器(OPO)、さらに専門に訓練されたオペレーターが必要でした。今日では、レーザー技術の大きな進歩によって、Spectra-Physics InSight X3などのターンキー方式の超高速パルスレーザーから、長波長での驚異的なレーザー出力を生み出すことができます。

蛍光イメージングにとらわれない、研究能力のさらなる拡大

最先端のイメージング手法とレーザー技術を備えたオリンパスのFVMPE-RS多光子顕微鏡は、多光子、SHG/THG検鏡法がオールインワンになったマルチモーダルイメージングプラットホームを体験する機会を提供します。これらの強力な能力により、蛍光検鏡法にとらわれることなく、研究能力の向上を図ることが可能です。
 

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ライフサイエンス部門、アソシエイトプロダクトマネージャー

Dr. Cheng-Hao Chienは、台湾の国立陽明大学でバイオフォトニクスの博士号を取得し、ボストンのタフツ大学医学部神経科学科で博士課程修了後のトレーニングを積みました。高度な検鏡法とライフサイエンス研究における10年間の経験を活かし、2020年~2021年にオリンパスで多光子検鏡法とカスタマイズソリューションを担当し、製品とアプリケーションのサポートを担いました。

2020年6月16日
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