オリンパスは光学観察・検査装置の開発、製造のために、対物レンズ等の光学ユニットをお客様へ供給し、工業、医療、ライフサイエンス研究等の幅広い分野に貢献しています。
お客様の装置設計の共通課題は⾼画質と⾃由度の確保です。UIS2対物レンズや結像レンズユニットがその共通課題を解決します。小型かつ軽量に設計されていることに加え、コンペンゼーションフリー(単独補正)方式で設計されています。これにより、市販レンズ部品等によるエンジニアリングなどの場合でも、視野周辺まで均質な画像を容易に維持できます。
顕微鏡装置組み込みのための光学設計
顕微鏡の結像光学系は、標本に近接して配置する「対物レンズ」と、対物レンズから射出された光を結像させる「結像レンズ」から構成されます。対物レンズと結像レンズの間には、光路分割のハーフミラーや蛍光観察のためのフィルター等を挿入するため、近年では対物レンズから射出する光は平行光(無限遠設計)とすることが一般的です。
一方、対物レンズを設計する際には高画質を得るための収差補正を行いますが、それには大きく2つの方式があります。コンペンゼーションフリー方式とコンペンゼーション方式です。
コンペンゼーション方式
コンペンゼーション方式とは、対物レンズで発生する収差を、結像レンズ側で打ち消しあう補正方法です。
コンペンゼーションフリー方式
コンペンゼーションフリー方式は、対物レンズ、結像レンズそれぞれが個々に収差補正を完結する方式です。
図1:コンペンゼーション方式による収差補正の仕組み。対物レンズと結像レンズが、収差を打ち消しあう働きをします。
図2:コンペンゼーションフリー方式による収差補正の仕組み。対物レンズと結像レンズそれぞれが独立して収差を補正します。
コンペンゼーションフリー方式のメリット
対物レンズと結像レンズでコンペンゼーション方式で設計をしていると、例えば対物レンズだけを利用したい場合に不都合が生じます。以下図3は対物レンズを利用してレーザー光を標本へ導光している様子の模式図です。コンペンゼーションフリー方式を採用している場合、レーザー波長による影響を受けません。しかしコンペンゼーション方式を採用していると、対物レンズの収差が残存していますので、レーザー光を意図しない箇所へ照射してしまうことになります。
図3:レーザー導入時の設計方式による影響。
(a) コンペンゼーション方式では対物レンズの収差が残存しているため、レーザー光を意図しない箇所へ照射してしまうことになります。(b) コンペンゼーションフリー方式を採用している場合、レーザー波長による影響を受けません。
コンペンゼーションフリー方式の光学系を装置へ組み込むメリット
コンペンゼーションフリー方式の光学系を装置へ採用することは、装置に対して多くのメリットを生み出します。
- 対物レンズのみ採用したい場合でも、視野周辺まで色のにじみなどなく、きれいな画像を取得できます。
- 複数波長のレーザー導入の際、レーザー照射の位置精度を高めることができます。
オリンパスのUIS2対物レンズ・結像レンズはコンペンゼーションフリー方式を採用しています。特にX Lineは、400nmから1000nmまでの収差補正を行っており、広視野を高精細に、広波長域において利用できます。結像レンズも同様にコンペンゼーションフリー方式を採用し、単独でも利用できるように設計されています。
オリンパスのコンペンゼーションフリー方式の光学系の工夫が、あなたの装置へ安心をもたらします。
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