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アップコンバージョンを用いた蛍光イメージングで生体観察の課題を解決

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アップコンバージョンを用いた蛍光イメージングで生体観察の課題を解決

生体現象を可視化する手法として、蛍光バイオイメージングが広く行われており、その蛍光体として現在蛍光タンパク質や量子ドットなどが多く用いられています。多くの場合、その励起光には可視光が使用されますが、可視光はエネルギーの高いため、退色、組織やサンプルへのダメージ、また光散乱性が高いため生体深部を観察するのが難しいという課題があります。 アップコンバージョンイメージングは、近年注目されている近赤外(NIR)光励起で可視蛍光を取得する観察する手法で、前述のような蛍光イメージングにおける課題を解決する手法の一つです。

アップコンバージョンとは

アップコンバージョンとは、近赤外光のような長波長で励起し、励起光より短い波長の光(可視光またはUV光)を発する現象です。この現象は、多光子吸収や、希土類イオンのような特定のナノマテリアルによる多段階励起でも発生することが知られています。 アップコンバージョンナノ粒子(UCNP)を用いたイメージングは、励起に連続発振型(CW)のダイオードレーザーを使用、近赤外光を照射することで多段階励起を引き起こし、短波長でエネルギーが大きい可視光を発光します。

図1. フォトン・アップコンバージョンの概念図

図1. フォトン・アップコンバージョンの概念図
 

アップコンバージョンイメージングのメリット

UCNPを用いた蛍光イメージングは、励起に長波長のレーザー(808nmや980nmなど)を使用します。そのため組織や生体の深部までを、光散乱のより少ない状態でイメージングすることができます。また長波長光はエネルギーが低いため、高エネルギーである可視光での励起と比較して生体へのダメージを抑えることもできます。 さらに、UCNPは安定性が大変高く褪色しにくいという特徴があるため、細胞・生体両方のイメージングに適しています。 ハード面では、励起に高出力のパルスレーザーではなくCWダイオードレーザーを使用します。そのため、多光子顕微鏡システムを用意することなく、共焦点顕微鏡システムとアップコンバージョンに必要なユニットだけで、生体の窓※領域の実験を行うことができます。

図2. 共焦点顕微鏡とアップコンバージョン用レーザー導入ユニット例

図2. 共焦点レーザー走査型顕微鏡とアップコンバージョン用レーザー導入ユニット例
 

アップコンバージョンのアプリケーション例

  • ケージド化合物のアンケージング
  • イオンチャネルの活性化
  • 神経刺激
  • LRET(発光共鳴エネルギー移動)

図3. 受精から5日目のゼブラフィッシュ幼生

図3. 受精から5日目のゼブラフィッシュ幼生

U87神経膠腫細胞を5ug/mlのコロミン酸でコートしたUCNPと12時間共培養した後、受精後5日目のゼブラフィッシュ幼生に注射。ゼブラフィッシュにおけるナノ粒子の分布を観察。
緑:トランスジェニックゼブラフィッシュの内皮細胞で発現したGFP
赤:UCNP.DSPE-PEGでコーティングした70nmコアシェルNaYbF4:Tm@NaYF4 ナノ粒子
Image courtesy of Dr. Yiqing Lu, School of Engineering, Macquarie University.

 

エビデントのアップコンバージョンソリューション

エビデントは共焦点レーザー走査型顕微鏡でアップコンバージョンイメージングを行うための拡張ユニットを用意しています。レーザーの種類・本数など実験に合わせたソリューションを提供します。 ご質問や見積もり依頼は、お近くの販売店にお問い合わせください。

*生体の窓:光が生体を透過しやすい近赤外の波長域 (650 - 1000nm) のこと
 

参考文献:

▸Na Ren, Na Liang, Xin Yu, Aizhu Wang, Juan Xie, Chunhui Sun. Ligand-free upconversion nanoparticles for cell labeling and their effects on stem cell differentiation. Nanotechnology. 2020 Apr 3;31(14):145101.

▸Yanxiao Ao, Kanghua Zeng, Bin Yu, Yu Miao, Wesley Hung, Zhongzheng Yu, Yanhong Xue, Timothy Thatt Yang Tan, Tao Xu, Mei Zhen, Xiangliang Yang*, Yan Zhang, and Shangbang Gao. An Upconversion Nanoparticle Enables Near Infrared-Optogenetic Manipulation of the Caenorhabditis elegans Motor Circuit. ACS Nano 2019, 13, 3, 3373–3386.

▸Yong-Xiang Wu, Xiao-Bing Zhang, Dai-Liang Zhang, Cui-Cui Zhang, Jun-Bin Li, Yuan Wu, Zhi-Ling Song, Ru-Qin Yu, Weihong Tan. Quench-Shield Ratiometric Upconversion Luminescence Nanoplatform for Biosensing. Analytical Chemistry 2016, 88, 3, 1639–1646.
 

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Assistant Manager, Life Science Research Solutions, Global Marketing

Kaori Hirayama currently works in the Life Science Marketing department at Evident where she is in charge of marketing customize products. She has over 10 years of experience working in confocal microscopy support. She holds a Bachelor of Hygienic Technology degree from Kitasato University, Japan.

2023年11月21日
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