共焦点レーザー走査型顕微鏡は、最近では生物学研究ツールとしてそれほど珍しいものではなくなってきたと言えるでしょう。このツールは、良好な色分解で複数蛍光の同時イメージングに、また、強化したセクショニング効果で標本内の深部イメージングに多く使用されています。
今日、最新のレーザー技術革新は、これらのアプリケーションにとって有用であり、より高度な実験が可能となります。今回の記事では、FV4000共焦点レーザー走査型顕微鏡の新しい近赤外(NIR)励起レーザーが高度な多重蛍光イメージングをどのように実現しているかを解説します。*
共焦点顕微鏡法における5チャンネル以上の多重蛍光イメージング:FV4000システムを使用した課題の克服
まず、多重化手法の歴史を明らかにすることから始めましょう。
多くの研究者は長年、DAPIと他の2色(通常、緑と赤のスペクトル内)で免疫蛍光イメージングに取り組んできました。
より多くの検出器やより優れた蛍光波長フィルタリングによる抗体とイメージングシステムの進化に伴い、4色の免疫蛍光が主流となりました。1つの画像にDAPI、緑、赤、遠赤の色を組み合わせるのが、最も一般的な4色の組み合わせでした。
しかし、多重化のための5つ目、6つ目のチャンネル導入には、2つの重要な要素が障害となっていました。
1. 優れた光線品質のNIRレーザーダイオードの欠如
第一に、共焦点レーザー走査型顕微鏡のための優れた光線品質のNIRレーザーダイオードは広く流通していませんでした。十分な(しかし過度ではない)強度、最小限の強度変動、対応する光線プロファイルはすべて、共焦点イメージングで使用するレーザーダイオードに必要な特徴です。しかし最近まで、これらの波長領域におけるNIRレーザーダイオードの選択肢は、ほとんどありませんでした。
ところが、これが最新のレーザーダイオード技術によって一変したのです。当社のFV4000共焦点顕微鏡は、685nm、730nm、785nmのレーザーダイオードに対応しているので、以下の表のような2次色素が効率的に励起します。
レーザー | 蛍光色素 | λ_Ex(nm) | λ_Em(nm) |
---|---|---|---|
LD685 | Alexa Fluor 680 | 679 | 702 |
DyLight 680 | 692 | 712 | |
Alexa Fluor 700 | 696 | 719 | |
iRFP720 | 702 | 720 | |
LD730 | ATTO 740 | 743 | 763 |
DiR | 750 | 782 | |
Alexa Fluor 750 | 752 | 779 | |
Cy7 | 753 | 775 | |
DyLight 755 | 754 | 776 | |
LD785 | DyLight 800 | 777 | 794 |
IR Dye 800CW | 778 | 794 | |
Alexa Fluor 790 | 782 | 805 | |
Cy7.5 | 790 | 810 |
ますます増加する新たな蛍光色素と共に、これらの色素は多重化の5つ目、6つ目の同時チャンネルの追加をより魅力的なものにしています。
2. NIR波長で感度が低減するフォトマルチプライアーチューブ
効率的なNIRイメージングの実現に対する2つ目の課題は、共焦点レーザー走査型顕微鏡の標準的な検出器として使用されているフォトマルチプライアーチューブ(PMT)の多くが、NIR波長域の標準的な検出波長(750nmより上)で感度が下がっていたことです。
近赤外検出域におけるこの感度の低減は、可視スペクトルの中心で感度が上がる、GaAsP PMTで特に発生していました。また、750nm以上の領域では、GaAs検出器の感度はほとんどありませんでした。
この問題を解決するために、エビデントではFV4000共焦点レーザー走査型顕微鏡にSilVIRディテクターの検出技術を組み込みました。SilVIRディテクターに用いられているシリコンフォトマルチプライアー(SiPM)は、広い波長域(400~900nm)にわたり高いSN比の蛍光画像を取得可能な半導体センサーです。
この技術のおかげで、FV4000システムは多重蛍光イメージング向けに最大6チャンネルの同時画像取得ができます。さらに、エビデントのX Line™高性能対物レンズと組み合わせると、FLUOVEW™ FV4000システムでは高品質な400~1,000nmの幅広い色収差補正が可能です。SilVIRディテクターとX-Line ™対物レンズの組み合わせは、多重蛍光イメージングとNIRイメージング全体において、これまでよりはるかに高い色再現性と実験の再現性向上を実現します。
*この記事は2020年1月21日公開の内容を基に更新されました。