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Image of the Year2021欧州地域受賞者が捉えた華やかな真菌の世界

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顕微鏡で見た真菌

例年、Global Image of the Year(IOTY)コンテスト受賞者のストーリーを、3つの地域最優秀賞に始まりグローバル最優秀賞までお届けしています。2021年度のコンテストでは、これまで米州の受賞者Ivan Radinさんへのインタビューを紹介しました。

今回ご紹介する欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域の優秀賞に輝いた受賞画像は、オランダの菌学者/生態学者であるVasilis Kokkorisさんの作品です。受賞画像とその背景となっている研究について、顕微鏡写真家であるVasilisさんからお話を伺いました。

Global Image of the Yearコンテスト地域最優秀賞受賞者、Vasilis Kokkorisさん

Global IOTY 2021コンテスト欧州地域最優秀賞を受賞したVasilis KokkorisさんとCX23顕微鏡

Q:受賞画像は何を表していますか?

A:この画像は、アーバスキュラー菌根(AM)菌として知られる特殊な菌類の3つの胞子(円形構造)を表しています。胞子内にあるカラフルな明るい部分はすべて、単核に相当します。胞子の背後にある抽象的な線は、菌の糸状部を表しています。この構造体は菌糸と呼ばれ、開管のように内部で栄養素、水、細胞小器官が見事なスピードで長い距離を移動します。

Q:この被写体のどのようなところが最も面白いと思いますか?

A:この胞子の特異な点は、普通は1つか2つの核を持つほとんどの細胞と対照的に、この細胞(胞子)は数百もの核を持ち、地球上で最も多くの核を持つ多核細胞の1つであることです。それぞれの胞子が持つ核内に、大量のDNAがまとまって見られる点に興味をそそられています。

Q:現在のお仕事についても少し教えていただけますか?

A:現在は、Amsterdam Institute for Life and Environment(A-LIFE)の一部であるアムステルダム自由大学(VU)で助教を務めています。顕微鏡は私の研究に欠かせない要素です。顕微鏡を使って、菌の特徴の視覚化・定量化や、菌の発生の秘密を解明に使用しています。

私の研究は、土壌真菌類(AM菌)の進化的意義、その独特な核構成と動態を深く理解することに重点を置いています。これまでの知識をより持続可能な農業に応用し、菌根共生が気候変動に直面している問題の理解をさらに深めていきたいと思っています。詳しくは、私のウェブサイトwww.vasilis-kokkoris.com/をご覧ください。

Q:研究ではどのようなイメージングツールを使用していますか?

A:菌根菌の研究には複数の方法を使用しています。菌の研究での使用を想定されていなかったツールを慣例にとらわれず探求するのが好きなのですが、それによって貴重な情報が得られることがあります。例えば、最近の研究(Kokkoris et al., 2019)では、菌根菌の菌糸成長を定量化するためにニューロンマッピングツールを使用しました。別の研究(Kokkoris Hart, 2019)では、根の中の菌根菌の存在を定量化するために、根形態を調べるツールを使用しました。さらに高度な顕微鏡(共焦点顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡)も使用して、AM菌の核組織や胞子の構造を調べています(Kokkoris et al., 2020, 2021)。

微細な菌根胞子と、樹枝状体という菌根菌構造

左:走査型電子顕微鏡で撮影した菌根胞子。右:菌根菌(紺色)が植物の根細胞(薄い青色)に定着し、「樹枝状体」という特殊な構造を形成します。この木のような構造で、2つの仲間(植物と菌)は資源を交換しています。

Q:顕微鏡で芸術創作をしようと思ったのはいつからですか?

A:顕微鏡への情熱が生まれたのは、両親から初めての顕微鏡をプレゼントされた12歳のときです。子供用の玩具ではありましたが、標本を40倍まで拡大することができました。レンズとステージの間に収まるものを片っ端から庭で集めて、顕微鏡でのぞいてみたことを今でも覚えています。そのことが、それまで見えなかった魅惑的な世界に目を開かせてくれて、生物学への情熱が築かれました。

顕微鏡写真は私のキャリアの中で大きな部分を占めてきました。長年にわたって顕微鏡で写真を撮り、その写真を使って有用なデータや科学的な成果を得てきました。同時に、科学的価値だけでなく芸術的価値もある画像を撮影することにいつも時間を費やしています。

Q:ほかに伝えたいことはありますか?

A:菌のネットワークやその機能と重要性について、もっと知りたい場合は、ぜひSociety for the Protection of Underground Networks(SPUN)のサイト(https://spun.earth/)をご覧ください。この団体は私が中心的協力者として関わっています。SPUNは科学的構想で設立された非営利団体で、菌根菌ネットワークのマッピングと、その保護を提唱しています。
 

参考文献

Kokkoris V, Chagnon P-L, Yildirir G, Clarke K, Goh D, MacLean AM, Dettman J, Stefani F, Corradi N. 2021. Host identity influences nuclear dynamics in arbuscular mycorrhizal fungi. Current Biology.

Kokkoris V, Hart MM. 2019. The role of in vitro cultivation on symbiotic trait and function variation in a single species of arbuscular mycorrhizal fungus. Fungal Biology 123: 732–744.

Kokkoris V, Miles T, Hart MM. 2019. The role of in vitro cultivation on asymbiotic trait variation in a single species of arbuscular mycorrhizal fungus. Fungal Biology 123: 307–317.

Kokkoris V, Stefani F, Dalpé Y, Dettman J, Corradi N. 2020. Nuclear Dynamics in the Arbuscular Mycorrhizal Fungi. Trends in Plant Science 25: 765–778.
 

IOTY 2022への応募

2022年度のGlobal Image of the Yearコンテストに興味をお持ちでしたら、ぜひIOTYページにアクセスして作品をご応募ください。
 

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マーケティング・コミュニケーション、マネージャー

Kerry Israel氏は、Olympus Corporation of the AmericasのScientific Solutions Groupのライフサイエンスのマーケティングおよびコミュニケーションのマネージャーです。Brandeis Universityで文学士号を取得し、広告・ソーシャルメディア戦略からグラスルーツアウトリーチまで、マーケティングのすべての側面で15年を超える経験を有しています。

2022年10月13日
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