オリンパスに入社してから、手作りのサンプルホルダーから実験用器具まで、お客様の独創的な共焦点顕微鏡の設置には驚かされていました。オリンパスのFV3000共焦点顕微鏡には正立型と倒立型の両方の形態があるため、様々な方法でサンプルに対応し、合わせることができます。
FV3000顕微鏡は、蛍光観察用に設計されています。 しかし、ほんの少しの工夫で反射型共焦点イメージングを行うことも可能です。多様性、実用性が高いにも関わらず、反射型共焦点イメージング技術は見過ごされがちです。そこで、システムを最大限活用できる、賢い使い方をご紹介します。
反射型共焦点イメージングを使って生体組織から内因性情報を抽出する方法を中心にご紹介します。
線維状生体分子複合体の反射型共焦点イメージング
反射光路の使い方の1つは、追加コントラストおよびサンプル環境認識のために、内因性シグナルを取得することです。方法は次の通りです。
生体繊維状たんぱく質構造と水の接触面は、強力な反射コントラスト信号を発信します。重複バンド幅に設置したTruSpectral検出器で励起光をデスキャンするだけで、特定の細胞構造、細胞外のマトリクス環境の組織化状態または物質表面の特性を識別することができます。
便利なことに、FV3000共焦点顕微鏡は、完全にスペクトルに基づく光路を特徴としているため、反射の検出には全てのチャンネルが利用できます。蛍光観察と組み合わせると、この追加マルチスペクトル反射機能により無標識の細胞構造の位置が抽出できます。
この例を考えてみてください。EnCor Biotechnology, Inc.提供による、免疫蛍光法で標識した固定ラットの脳切片のスライドのイメージングを行いました。下図(図 1)でお分かりのように、スタンダードの3チャンネルVBFでの取得において、ニューロンの樹状突起(オレンジ)、ドーパミンまたはノルエピネフリンを含むカテコールアミン作動性ニューロン(マゼンタ)および核を染色するインターカレーション染料(シアン)のエピトープ固有の明確な標識が得られました。
図1:3色の免疫蛍光で標識されたラットの、EnCor Biotechnology, Inc.の抗体で染色した脳切片。上のパネル:X Line 20倍対物レンズで撮影した全視野単一Z面画像。下のパネル:ハイライトしたはめ込み角の真の画素分解能。
免疫蛍光調合液で作成した、強い広域スペクトル蛍光背景にも関わらず、反射の能力を利用してより多くの内因性情報を引き出すことができます。
レーザー線405、488、561および640nmの反射をイメージングするために、4チャンネルを同時に使用することでこの組織内部の有髄ニューロンのマルチスペクトルマップを作成することができます。これがどのように見えるかを、下図でご確認ください(図2と3)。
図2(左):図1の免疫蛍光由来の信号の3チャンネル合成。右:405、488、561および640nm レーザー線を用いて同時に取得した反射型共焦点イメージング同視野4チャンネルの合成画像。 | 図3(上):同時に取得した、各線の個々の反射型共焦点画像。下:免疫蛍光で標識されたドーパミン含有ニューロンの合成画像および内因性の軸索髄鞘形成のマルチスペクトル反射型共焦点画像。 |
この無標識情報を、免疫蛍光で選択的に標識された対象ニューロンに発生している髄鞘形成の程度を判断するため、あるいは軸索の追跡が必要なアプリケーションを支援するために使用することができます。
また、3Dの培養組織の細胞外マトリックスを解明するために反射型共焦点イメージングを使用することもできます。下図(図4)でお分かりのように、血管形成中に増加した新生血管が、間質環境のコラーゲン原線維と密接に作用し合っています。
図4:コラーゲン基質内部の3Dでプリントした血管のZ-投影。上:ローダミンで標識した内皮細胞の蛍光共焦点画像。中央:405nmの線維状コラーゲン網と血管近傍にある再構築領域を示す反射型共焦点画像。下:合成画像。スケールバーは100µm。
FV3000共焦点顕微鏡を使って体外原血管形成を再取得するために毛細血管を分離したAdvanced Solutions Life SciencesのAngiomics™を使用することで、血管由来の新生血管(共焦点蛍光で視覚化)が、3Dの間質環境で増加しながら、隣接したコラーゲン繊維(反射型イメージングで視覚化)を再組織化していることが明らかになります。