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アプリケーション

スフェロイドにおける細胞生死アッセイの三次元解析ワークフロー


要約

3次元細胞解析ソフトウェアNoviSightは、体積や真球度、細胞数のようなパラメーターを測定することによって、スフェロイドやその他の3次元物体に関する統計データを提供します。このアプリケーションノートでは、スフェロイド細胞生死アッセイ向けのNoviSight3次元細胞解析ワークフローをご紹介します。

序論

スフェロイドやオルガノイドを使用した3次元ハイコンテント解析(HCA)は難しい場合があります。3次元サンプルの形態や内部の状態に関する情報を得るために、それらを3次元的に解析できるのが理想的です。NoviSightソフトウェアのTrue 3D解析は、連続したZスタック蛍光画像に基づいて、3次元サンプルの体積、細胞数および細胞の状態を計測することによって、このプロセスを簡素化することができます。一方、従来の解析では、1断面画像(図1、左、2次元解析)を使用するか、投影像(図1、中、2.5次元解析)を使用します。どちらの手法でも、空間や形態、体積に関する情報など大量のデータが3次元サンプルから失われています(図1)。

このアプリケーションノートでは、スフェロイド細胞生死アッセイを使用してNoviSightソフトウェアで3次元サンプルを定量的に解析する方法を、実例でご説明します。

図1(左から右):2次元、2.5次元、3次元解析の図

図1(左から右):2次元、2.5次元、3次元解析の図

方法

サンプルの作製

PrimeSurface®96Uプレート(住友ベークライト)で1ウェル当たり500個のHT-29細胞を8日間培養して、スフェロイドを形成し、その翌日に、NucView® 550(Biotium社)を添加したさまざまな濃度のスタウロスポリン(STS)を添加しました。NucView 550はカスパーゼ-3蛍光プローブであり、死細胞の核が赤色で蛍光染色されました。STSとNucView 550で処理した後で、HT-29スフェロイドを4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.5% Triton X-100/PBS(-)で透過処理しました。Hoechst 33342でスフェロイドの核を4°C(39.2°F)で一晩染色しました。染色後に、スフェロイドをSCALEVIEW-S4で透明化しました。

イメージングと解析

共焦点顕微鏡FV3000とセミアポクロマート対物レンズ(LUCPLFLN20X)を使用して、3次元でサンプルのイメージングを行いました。取得条件については下記をご覧ください。Zステップサイズは 3 μmでした。Hoechst 33342(青色の蛍光)には405 nmレーザーを使用し、NucView 550(マゼンタの蛍光)には561 nmレーザーを使用しました。処理を施していないスフェロイドとSTS処理したスフェロイドについて、顕微鏡を使用して取得したボリューム画像を図2に示します。STS処理によってHT-29スフェロイドの細胞死が誘導されていることがわかりました。処理を施さずに8日間培養したスフェロイドの中心部分は、おそらく栄養不足か低酸素が原因で死滅していると推測されます。 
 

図2:HT-29スフェロイドのSTS処理したもの(右)と処理していないもの(左)のボリューム画像

図2:HT-29スフェロイドのSTS処理したもの(右)と処理していないもの(左)のボリューム画像
 

利点

  • 3次元生死判別試験を簡単に実施できます。
  • 直感的ユーザーインターフェースは、Zスタック画像を再現性のある定量的データに変換するのに役立ちます。
     

3次元生/死細胞解析方法

NoviSightソフトウェアを使用してスフェロイド中の生/死細胞を定量的に解析するには、表1に略述した手順が必要です。NoviSightソフトウェアがZ面画像から核を3次元的に認識できるよう、Z断面のステップサイズを3 μmに設定します。これは単独の核を検出できる最大の測定間隔です。
 

手順 詳細
サンプルの作製 細胞培養と蛍光染色
オプション:固定と透明化
細胞数の解析が必要な場合は、核染色を行うことをお勧めします。
イメージング 複数枚のZスタック画像の取得
例:共焦点顕微鏡、多光子顕微鏡
解析 1. 核、体積、オルガネラなど、目的の対象物を認識します。
2. 解析パラメーターを設定します。
3. ゲーティングによるグラフ解析
4. 統計的解析
 

表1:サンプル作製から解析までの3次元解析ワークフロー
 

NoviSightソフトウェアの解析手順

主要対象物の認識

細胞生死アッセイは生/死細胞の数によって評価されました。NoviSightソフトウェアは、核染色に基づいて細胞数を検出することができます。細胞核を認識するために、我々はNoviSightの核検出に特化したモジュールであるNuclearLを使用しました。適切な細胞サイズ、背景強度、Z/XY比(核のZ軸方向の伸び)を入力すると、自動的にNoviSightソフトウェアが3次元空間でスフェロイドの核を検出します(図3A)。

解析パラメーターの設定

Hoechst 33342で染色されたすべての核のうち、NucView 550シグナル強度が高いものは死細胞でした。このため、NoviSightソフトウェアは、認識された核対象物のCH2(NucView 550)強度レベルによって、生/死細胞を分類することができます(図3B)。つまり、NoviSightソフトウェアは、核の認識設定のみでスフェロイドの生/死細胞を分類することができます。

図3:主要対象物の認識 (A) NuclearLモジュールによって核が認識されました。認識された個々の核が色付きの円で囲まれました。(B) 解析パラメーターが設定されました。たとえば、パラメーター10は、主要対象物(核)のCH2(死細胞シグナル)の最大強度です。

図3:主要対象物の認識 (A) NuclearLモジュールによって核が認識されました。認識された個々の核が色付きの円で囲まれました。(B) 解析パラメーターが設定されました。たとえば、パラメーター10は、主要対象物(核)のCH2(死細胞シグナル)の最大強度です。

核認識が終了すると、認識された核を散布図やヒストグラムに対象物データとしてプロットすることができます。解析パラメーターから散布図のX軸またはY軸を調整することができます。「Center X」/「Center Y」をそれぞれ設定すると、核の中心座標がグラフにプロットされます(図4A)。グラフ上の一点でクリックすると、NoviSightソフトウェアがオリジナル画像上の同じ位置を指し示すことができます(図4B)。
 

図4:スフェロイドの定量解析画像 (A) 「Center X」および「Center Y」の解析パラメーター(図3Bで設定)がX軸とY軸にそれぞれ設定されると、認識された個々の核がグラフにプロットされました。必要に応じて、X/Y軸の解析パラメーターを変更することができます(赤い四角枠)。(A/B) NoviSightソフトウェアでは、解析データと原画像を視覚的にリンクすることができます。グラフ上で、認識された核のプロットをクリックすると(A、赤の矢印)、オリジナル画像上の同じ位置が自動的に示されます(白の矢印)。

図4:スフェロイドの定量解析画像 (A) 「Center X」および「Center Y」の解析パラメーター(図3Bで設定)がX軸とY軸にそれぞれ設定されると、認識された個々の核がグラフにプロットされました。必要に応じて、X/Y軸の解析パラメーターを変更することができます(赤い四角枠)。(A/B) NoviSightソフトウェアでは、解析データと原画像を視覚的にリンクすることができます。グラフ上で、認識された核のプロットをクリックすると(A、赤の矢印)、オリジナル画像上の同じ位置が自動的に示されます(白の矢印)。

図5:細胞の分類のためのグラフ解析

図5:細胞の分類のためのグラフ解析
(A) 解析パラメーターであるCH2平均強度(図3Bで設定)がX軸とY軸でそれぞれ設定されると、CH2(死細胞シグナル)の平均強度の順に主要対象物の数(核)がグラフに表示されます。CH2強度のゲーティングによって、生細胞と死細胞を分けることができました。(B) 緑色で表示された、死細胞が認識された領域のボリューム画像
 

統計的解析

NoviSightソフトウェアは多数のサンプルを同時に解析することができます。解析によって得られた定量的データを、ヒートマップ(図6A)として表示したり、さらなる解析を行うためにCSVファイルとしてエクスポートしたりすることができます。個々のゲーティングでデータを出力することもできます。ここでは、データから、様々な濃度のSTSをHT-29スフェロイドに処理すると、用量依存的にアポトーシスが誘導されることがわかりました。(図6B)。 
 

図6:STS処理/非処理におけるHT-29スフェロイドの生/死細胞解析の定量結果 (A) NoviSightソフトウェアは各ゲートについての定量化データを出力します。データをヒートマップに表示することもできます。(B) STSによってHT-29細胞死が用量依存的に増加しました。

図6:STS処理/非処理におけるHT-29スフェロイドの生/死細胞解析の定量結果 (A) NoviSightソフトウェアは各ゲートについての定量化データを出力します。データをヒートマップに表示することもできます。(B) STSによってHT-29細胞死が用量依存的に増加しました。

データと画像の連動

データと画像とのリンクはハイコンテント解析の主な利点です。プレートリーダーとは異なり、HCAはオリジナル画像を基準にして、細胞の形態、位置および強度を視覚的に確認します。NoviSightソフトウェアはこの能力を最大限に活用します。たとえば、以下に示すような特定のデータポイントや対象物(図7)をクリックすると、対応する画像がソフトウェアによって表示されます。

  • 散布図上の点
  • ギャラリー表示の対象物画像
  • ヒートマップ上のウェル
  • 表中の数
     

図7:データポイントや対象物をクリックすると、対応する画像上の同じ点がNoviSightソフトウェアによって表示されます。

図7:データポイントや対象物をクリックすると、対応する画像上の同じ点がNoviSightソフトウェアによって表示されます。
 

結論

3次元サンプルの3次元定量解析は複雑に見えるかもしれませんが、NoviSightソフトウェアはワークフローを最初から最後まで効率化することができます。たとえば、スフェロイドの細胞生死解析に必要なパラメーターは、核認識だけです。この効率化されたワークフローを、関連する3次元モデルに適用することもできます。
 

著者

Mayu Ogawa(オリンパス)

このアプリケーションノートに関連する製品

3次元細胞解析ソフトウェア

NoviSight

NoviSight 3D細胞解析ソフトウェアは、マイクロプレートベースの実験において、スフェロイドや3Dオブジェクトの統計データを提供します。3Dで細胞活性を定量化でき、まれな細胞事象の取得が容易になり、正確な細胞数の取得、検出感度の向上が実現します。NoviSightソフトウェアで処理可能なイメージング法は多岐にわたり、ポイントスキャン共焦点イメージング、2光子イメージング、スピニングディスク共焦点イメージング、超解像ライブセルイメージングなどがあります。

  • 構造体全体から細胞内機能まで高速に3D画像識別
  • 正確な統計解析
  • すぐに使用できる各種デフォルトアッセイが付属しているほか、独自設計も簡単

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