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アプリケーション

ハイスループット薬剤スクリーニングの三次元空間解析


多数のサンプルに対する薬効を正確に評価するために、NoviSightソフトウェアを使用して、がんスフェロイドの3次元画像を解析しました。 

序論

3次元がんスフェロイドを使用して薬剤の性能を評価することは重要です。なぜなら、スフェロイドは腫瘍の複雑な微小環境を再現するからです。これにより、研究者は、腫瘍の本来の環境により近いパラメーターのもとで、薬剤の有効性を評価することができます。研究者は、スフェロイドを使用してハイスループットな薬剤スクリーニングを行うために、シンプルなプロトコル、半自動化された高速イメージング、およびマルチウェル3次元解析を用いる必要があります。
本研究において、我々は、384ウェルプレートを使用して液交換のない細胞生存率アッセイを実施して、共焦点顕微鏡FV3000RSのレゾナントスキャナーを用いて高速画像を取得して、3次元ソフトウェアNoviSightで画像を解析しました。多数のサンプルに対する薬効をより正確に評価するため、スフェロイドを3次元で解析しました。
 

アプリケーションのワークフロー

アプリケーションのワークフロー
 

アプリケーションのワークフロー

利点

  • 液交換の必要がないシンプルなプロトコルを使用します。
  • 高速レゾナントスキャナーを使用して、自動的に画像を取得します。
  • 3次元空間解析により多数のサンプルを正確に解析します。
     

方法

細胞の作製

コーニング®384ウェル丸底プレート(1ウェル当たりの細胞数が100個)にHeLa子宮頸がん細胞を播種して、10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で24時間培養しました。そのプレートを弱く遠心分離して、気泡を除去しました。

サンプルの作製

シスプラチンとスタウロスポリン(STS)薬剤をさまざまな濃度でサンプルに添加して、24時間培養しました。続いて、サンプルにReadyProbes Cell Viability Imaging Kit(Thermo Fisher Scientific)を添加して5時間培養しました。膜透過性の差を利用して、全細胞に対する死細胞の数をカウントすることで(全細胞:青/死細胞:緑)、細胞生存率を測定します。このシンプルな作製方法では、細胞播種からイメージングまでの間に液交換や固定、洗浄を行う必要はありません。

イメージングと解析

セミアポクロマート対物レンズLUCPFLN20Xを取り付けた共焦点走査型レーザー顕微鏡FV3000RSを使用して、スフェロイドの蛍光画像を取得しました。イメージング領域の設定後に、顕微鏡のレゾナントスキャナーによって画像が自動的に取り込まれました。NoviSightソフトウェアは、ウェルの位置やサンプルの位置などのプレートに関する情報と組み合わされた多数の画像から、データを取り込むことができます。画像が取り込まれると、ソフトウェアが3次元で画像を再構築します。NoviSightソフトウェアは、核などの対象物を認識して、対象物内のさまざまなシグナルを解析することができます。
 

図1

図1 液交換のないハイスループット薬剤スクリーニングの方法
 

結果

多数のサンプルの高速3次元イメージング

1つのウェルのZスタック画像(厚さ2.33 μm、断面数122、チャンネル数2)を観察するのに約1分かかりました。シスプラチンおよびSTS処理により、死細胞の数が濃度依存的に増加しました(図2)。

図2

図2 スフェロイドの薬剤反応の高速イメージング
 

スフェロイドにおける薬剤感受性の高スループット3次元解析

全細胞のシグナル(青)により、核を認識することができました(図3A)。続いて、緑色のシグナルの有無(陽性シグナル:死細胞/陰性シグナル:生細胞)に基づいて、すべての細胞が生細胞または死細胞に分類されました。グラフから選択した画像を確認することによって、陽性シグナルと陰性シグナルが分類されました(図3B)。分類の後で、ソフトウェアのヒートマップを使用して、スフェロイド内の死細胞シグナルの総強度を簡単に確認することができます(図4A)。続いて、全細胞に対する生細胞の割合(%)が算出されてプロットされました(図4B)。その結果から、どちらの薬剤もHeLa細胞への感受性が高いことが分かりました。
 

(A)

Analysis region

object recognition

3D view

(B)
図3

図3 NoviSightソフトウェアは、シグナルに基づいて対象物を認識して分類することができます。
 

(A)

図4(A)

(B)

図4(B)

 

図4

図4 ヒートマップ表示と用量反応曲線

薬剤感受性の高スループット空間解析

本研究では、高度な空間解析を行うために3次元的に画像を取得しました。NoviSightソフトウェアは、解析の対象領域を任意に設定することができます。そこで、各スフェロイドの中心部と周辺部を解析するようソフトウェアを設定しました(図5A)。続いて、これらの領域内でのポピュレーション解析を行いました。この方法により、マルチウェルプレート上の多数のスフェロイドに対する薬効の空間解析を行うことができます。続いて、ソフトウェアは、中心部と周辺部の細胞数に対するそれぞれの死細胞の割合を算出しました(図5B)。
この場合、中心部と周辺部の両方において、死細胞の数は濃度依存的に増加しました。シスプラチンと比べて、スタウロスポリンは低濃度でもスフェロイドの中心部で効果があります。

(A)

図5(A)

図5(A)

(B)

図5(B)

図5(B)

図5. NoviSightソフトウェアは、スフェロイドの各領域の高度な空間解析を行うことができます。
 

結論

シンプルなプロトコル、高速共焦点イメージング、およびNoviSightソフトウェアを使用して、ハイスループット3次元画像を取得し、スフェロイド内の細胞生存率を分類して薬剤反応性を解析しました。この空間解析手法により、多数のサンプルに対するより高度な薬剤評価を行うことができます。

著者

Hiroya Ishihara, Biological Evaluation Technology 2, Research and Development


※HeLa細胞は医学研究で最も重要な細胞株の一つで、科学の発展に偉大な貢献をしました。しかし、この細胞の元となったヘンリエッタ・ラックス(Henrietta Lacks)さんの同意が得られていなかった事実を認識しなければなりません。HeLa細胞の使用は、免疫学や、感染症学、癌研究などにおける重要な発見に貢献しましたが、同時に医学における個人情報保護や倫理についての重要な議論も引き起こしました。
ヘンリエッタ・ラックスさんの生涯と現代医学への貢献における詳細は、以下にアクセスしてご覧ください。
http://henriettalacksfoundation.org/

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