現在では細胞の培養用途として多くの培養容器メーカーから様々なカルチャーディッシュが販売されています。それらカルチャーディッシュの中でも生細胞を蛍光観察する場合はガラスボトムのカルチャーディッシュが多く用いられています。ガラスボトムのカルチャーディッシュは蛍光観察時にディッシュから発生する自家蛍光がほとんど無く、高開口数のオイル対物レンズも用いることができますのでより鮮明な蛍光像を取得することができます。しかしガラスボトムディッシュが全て万能という訳ではなく蛍光イメージングにおいては最適ですが、細胞の種類によっては細胞培養そのものの条件に合わないケースがあります。
ガラスボトムディッシュが細胞培養そのものの条件にあわない、上手く培養できないケースとしては例えばiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)のような幹細胞から目的の細胞へ分化させようとした時にガラスよりもプラスチックボトムのほうが目的の細胞へ安定的に分化することが多く、ガラスボトム底ディッシュでいくら培養条件を検討しても目的の細胞へ全く分化できないことがあります。その場合は代わりに汎用的なプラスチックボトムディッシュを用いますが、その際、顕微鏡を用いる実験である問題が生じてしまいます。それはプラスチックボトムディッシュで培養されている細胞を蛍光観察しようとするとプラスチックボトムの自家蛍光が強すぎて、それがバックグラウンドとなり本来観たい蛍光シグナルが完全に埋もれてしまうということです。
それでもプラスチックボトムディッシュのまま鮮明に蛍光観察したいという多くの幹細胞研究者のニーズ応えてオリンパスは従来タイプの20倍位相差対物レンズと比べて開口数(NA)を飛躍的に向上させた20倍高開口数位相差対物レンズUCPLFLN20XPHを開発し、2012年から販売を開始しました。この開口数の向上により、ルーチン的な幹細胞の蛍光チェックだけでなく、幹細胞の分化過程などをプラスチックボトムディッシュのままで蛍光タイムラプスイメージングができるようにもなりました。
ここでは20倍高NA位相差対物レンズUCPLFLN20XPHを用いてプラスチックボトムディシュのまま幹細胞を鮮明に蛍光・位相差観察した例や、その対物レンズを発光イメージングにも使用した観察例をご紹介します。
プラスチックボトムディッシュに培養されたマウス由来ES細胞核内のGFP標識ヒストン(GFP-H2B)を従来タイプの開口数0.4の20倍位相差対物レンズと開口数0.7の20倍高開口数位相差対物レンズで撮り比べました。
GFP-H2Bを発現したマウスES細胞
蛍光観察 | ||
位相差観察 左:従来タイプの20倍位相差対物レンズ LUCPLFLN20XPH (NA0.45) |
上記画像を比べると明らかに20倍高開口数位相差対物レンズ UCPLFLN20×PHで撮影した画像のほうが明るい蛍光画像を取得でき、位相差画像も核小体がくっきりと観察できています。これは高NA20倍位相差対物レンズ UCPLFLN20×PHが長作動距離(W.D.:0.8-1.8mm)を保ちながら開口数を向上したことによるものです。
このように20倍高開口数位相差対物レンズ UCPLFLN20×PH対物レンズを用いれば、ガラスボトムディッシュと比べても遜色のない蛍光画像が取得でき、対物レンズ付属の補正環を調整すれば、プラスチックディッシュ底の厚みの違いで発生する球面収差を補正することもできます。
撮影条件
サンプル:マウスES細胞
蛍光標識:GFP-H2B
培養容器:プラスチックボトムディッシュ
対物レンズ:高開口数位相差対物レンズUCPLFLN20XPH
CCDカメラ:顕微鏡用デジタルカメラDP80
顕微鏡:倒立型リサーチ顕微鏡IX73
上記1)では高NA20倍位相差対物レンズ UCPLFLN20×PHを用いることでプラスチックボトムディッシュそのままの培養下で鮮明な蛍光・位相差観察ができました。もう一つ重要なこととしてはインキュベーターからディッシュを取り出して繰り返し蛍光チェックする際に励起光による光毒性を極力減らして幹細胞の活性を維持しなければなりません。その場合は高感度なCCDカメラを用いれば、励起光を減光しながら効率良く蛍光シグナルを検出できます。
オリンパスでは、顕微鏡デジタルカメラDPシリーズの1つに色再現性の優れたカラーCCDと高感度モノクロCCD両方を搭載した顕微鏡用デジタルカメラDP80をラインナップしています。顕微鏡用デジタルカメラDP80のモノクロCCDモードと高開口数20倍位相差対物レンズ UCPLFLN20×PHを用いることで励起光を減光しながら以下画像のようにマウス由来のiPS細胞で発現するNanog-GFPを効率良く検出することができます。
Nanog-GFPを発現したマウス由来のiPS細胞
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撮影条件
サンプル:マウスiPS細胞
蛍光標識:Nanog-GFP
培養容器:プラスチックボトムディッシュ
対物レンズ:高開口数位相差対物レンズUCPLFLN20XPH
CCDカメラ:顕微鏡用デジタルカメラDP80
顕微鏡:倒立型リサーチ顕微鏡IX73
20倍高開口数位相差対物レンズ UCPLFLN20XPHはプラスチックボトムディッシュを用いた発光イメージングでも威力を発揮します。発光イメージングの特長はシングルセルレベルで遺伝子発現量を定量的に検出することができます。オリンパスでは発光イメージングに特化した専用機の発光イメージングシステムLV200をラインナップしていますが、このシステムにおいても1視野で複数細胞が観察できる広視野20倍で高開口数の UCPLFLN20XPHが高いパフォーマンスを発揮します。以下画像のようにマウス由来ES細胞内で発現するNanog-Lucをシングルセルレベルで高感度に発光(黄)・位相差イメージングができます。
マウス由来ES細胞内で発現するNanog-Luc
撮影条件
サンプル:マウスES細胞
発光:Nanog-Luc
培養容器:プラスチックボトムディッシュ
対物レンズ:高開口数位相差対物レンズUCPLFLN20XPH
顕微鏡:発光イメージングシステムLV200
20倍高開口数位相差対物レンズUCPLFLN20XPH は長作動距離(W.D.:0.8-1.8mm)を保ちながら高開口数(NA0.7)を実現したことでプラスチックボトムディッシュ培養のまま細胞を鮮明に蛍光・位相差・発光イメージングできます。対物レンズ付属の補正環を調整することで、プラスチックディッシュ底の厚みの違いで発生する球面収差を補正することができます。
20倍高開口数位相差対物レンズUCPLFLN20XPH はフル電動倒立型リサーチ顕微鏡IXシリーズのZドリフトコンペンセーターIX-ZDCにも対応しており、この自動フォーカス補正機能を用いることで常にピントのあった画像を取得することができます。また電動ステージを用いればプラスチックボトムディッシュを用いたフル電動のセルベースアッセイシステムも構築できます。
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